声を出しやすい状況を作ろう!
「発声のエクササイズ」というと、すぐに「どう声を出すか」を考えがちですが、トレーニングの際には、まず、より声を出しやすい状況を作ることを考えます。
つまり、いきなり目的の動作をするのではなく、まずは動作に使う筋肉を鍛えていこう、ということです。
発声しやすい状況を作るには、まず土台である筋肉を鍛えます。
また体幹部の筋肉が弱い方は、口腔の筋肉も弱いため、頸部や肩甲骨まわりに必要以上に力を入れて、固めてしまうことが多いのです。
この場合は、ストレッチを行いつつ、発音に必要な口の動きの筋肉をつけていくエクササイズが効果的です(^o^)
そして①で正しい姿勢を実感した後に、②以下のエクササイズを実践して下さい
①重心の位置を確認する
②体幹部を鍛える
③頸部と肩甲骨まわりのストレッチ
④呼吸のための運動とストレッチ
⑤下顎と口唇、頬の運動
⑥舌の運動
⑦喉頭の動きをコントロールする
⑧発声で使う筋肉と器官を実感する
ここで注意ですが、すべてのエクササイズを一気にやるとかえって体の負担となります。
筋肉は休む期間がないと成長しにくくなるので、朝は①~④のエクササイズ、夜は⑤~⑧のエクササイズというように分けて行うようにしましょう。
また、ある日の朝は上半身を重点的に行い、次の日の朝は下半身のエクササイズを中心に行ったりすると効果的です。
「筋肉が張ってきた」「疲れてきた」などの状態になったなら、無理をせずにやめてしまい、使った部分の反対の方向に体を伸ばす運動を取り入れると疲労が残りにくくなります。
もどかしい声の人は省エネモードを解除する
同じように「声が小さい」といわれる人でも、体を触ってみると、発声に必要な筋肉は充分についている人もいます。
深呼吸をしてもらうと、ちゃんと吸気も送り込めているのに、何故か声が小さい。
このタイプの人は、テレビに出ている評論家や記者、政治家などによく見かけます。
ニュース番組でキャスターに話しかけられて、懸命に大きな声を出して答えているのですが、どうも届いてないようなのです。
話している声が小さくて、内容まで聞き取れず、キャスターも困っているのでしょう。
いくつか要因は考えられるのですが、1番はマイクが音声を拾えるほど安定した「呼気」を
出せていないことが考えられます。
こういう方の場合、声を出すための筋肉はあるので、ちゃんと動かせば良いのですが、それが上手くできていない。
いいかえれば、発声時に体が肺を動かす必要をあまり感じておらず、ある意味省エネモードになっているのです。
ですから、肺を動かす必要性を理解してもらい、④の呼吸のエクササイズなどで、動かし方のコツを掴んでもらうところから始めたほうがいいでしょう(^o^)
同時に、喉頭近辺の動きや口腔の動かし方などもチェックします!
大きな筋肉は比較的ついていても、口腔や頸部の筋肉が弱い場合は、パワー不足の方と同様に、これらの筋力を上げていくことも大切になってきます。
メンタル面に原因があることも・・・・
大きな声が出ない人には、メンタル面に問題を抱えている場合があります。
子供の頃に、人前で話して笑われたり、なにか言われたりした経験というのは、意外に引きずってしまうものです。
こういう場合、どうしたら良いかわからず、途方に暮れてしまうようですが、カウンセリングや手術などが必要なケースを除けば、トレーニングで改善することが多いです。
また、トレーニングを習慣化して体を鍛えると、「これだけ練習をしているんだから」という裏付けもできます。
何より、人前で話をした時に「以前よりいい状態でしゃべれた」「楽に声が出せた」という事実が支えになります(^_^)
安定した通る声になるにはどうしたら良いか??
これまでの2つのケースは、いずれも充分な呼気を肺に送り込むことができずに、声が小さくなっているものでした。
これに対して、呼気の量は充分なはずなのに、実際の声は残念ながら大きくない、というケースをいくつかご紹介します!
メリハリのない、息が続かない声→タイミングのズレを正す
聞こえる声が、大きかったり小さかったり、「何だか安定していない」つまり、息を吐き出す呼気のタイミングと声帯の振動、口腔の共鳴のタイミングがずれてしまっている場合です。
人は話をする際に、息を吐きながら声帯や口腔をコントロールしています。
発声時には露骨に息継ぎをすれば不自然になりますから、タイミングを見計らって息を吸うのですが、このタイプではこれが上手くいっていません。
また体のあるところは必要以上に力が入っているのに、力が入ってほしいところが弱かったりします。
すると、話の内容で強調するポイントと、話し声で強調しているポイントがずれてしまうのです。
こういった人を1番見かけるのが選挙の時です。
政権放送や街頭演説などで、「この人はいつ話を区切るのだろう?」とハラハラしてしまうくらい、一息で精一杯話したかと思えば、次は「ええっ?もう話が切れるの?」といった話し方をしている人を見かけます。
不安定な印象ばかりが強まってしまいますよね(^_^;)
この場合も、発声の仕組みを理解して、呼気の流れる順番を意識することがとても大事になってきます!
「頑張って何とか声を出そう」とし過ぎると、こういう声になってしまう場合があるので、リラックスが必要です。
リラックスというと「力を抜く」というイメージばかりが先行しますが、本来リラックスというのは適度に力が抜けつつも姿勢を保つ必要な力が入っている状態のことを指します。
このタイプの方には、声の仕組みを理解してもらって上で、「力を入れれば大きな声が出る」とか「気合で声をだす」といった、今までの声に対する認識を改めてもらうことも時には必要になります。
聞き取りやすい声というのは、ただ大きな声を出せば良いのではなく、むしろ一定の呼気を吐き続けられるほうが大切な要素なのです。
呼吸をすることで肺から呼気がどう動き、気道を通って声が出ているかを、①③④のエクササイズでまず認識してもらい、⑤~⑧に進みます。
暴走族のような無駄に大きな声では話さない
次は、力任せに声を出している暴走族タイプです。
呼気は十分どころか、やけくそのように空ぶかしになってしまっているタイプです。
「なんでいつも怒鳴っているの?」と聞きたくなるような声ですね(^_^;)
こちらも選挙でよく見かけるタイプであり、年配の政治家で大声で演説をする方に多いですね。
このタイプの場合、実は胸の筋力が弱い、あるいはあっても上手く動かせないということが
考えられます。
つまり、呼気の量を調節するバルブの役割を果たす筋肉が弱いので、マフラーなしに声を
ぶっ放しているように聞こえるのです。
また、タバコが原因ということも考えられます。
タバコの煙には5%ほどの一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素中毒でも知られていますが、この物質は運動能力を下げると言われています。
発声は呼吸と深く関わっている運動ですから、声をだす仕事をしていく上では、タバコはマイナスになるものだと思っていいかと思います。